日本をダメにした10の裁判:ぁぁ、モラルハザード

2008年7月28日
社会派

裁判の本、裁判員制度を意識して最近増えています。そんな中、日経からも出ていましたので読んでみました。
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社会派に分類することにしました。

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なかなか刺激的な題名であります。
しかも、出版元が「日本経済新聞出版社」です。なかなか奇妙というか、奇異な感じのする組み合わせだと、(勝手に)思いました。
ちなみに、編者は「チームJ」と呼ばれる方々です・・・。

現在の社会制度や実際の人々の営みのありかたのようなものを大きく決定付けた10の裁判例を取り上げ、それらの裁判により、いかに今というものを「ダメ」にしてしまったのか、ということを考えています。

例えば、昨今さかんに騒がれる「非正規雇用」の問題。
「派遣」とか、「請負」と言われる労働形態が一般化し、それに伴い所得や待遇の「格差」が、大きな問題とされています。
その端緒を、この本では東洋酸素事件と呼ばれる裁判の判決に求めています。
この、東洋酸素事件では、経営者が労働者を整理解雇(今風に言えば狭義のリストラ)するには、相応の理由が必要であり、その理由が不適切であれば、整理解雇そのものが無効になる、と裁判により判断されました。

それにより、企業側の都合による(正規)従業員の解雇が、きわめてハードルが高く、実施しづらいものになり、「そう簡単に整理解雇すべきではない(できない)」という風潮が形作られていきました。
そこで、企業側では、非正規雇用を減らし、直接の労使関係にない「派遣」や「請負」と呼ばれる雇用関係を行うようになり、さらには行政もそれを後押しするような法整備を行ってきました。

それが、昨今叫ばれる労働格差となって問題視されているというわけです。
東洋酸素事件の判決は1979(昭和54)年。ずいぶんと昔の判決が、今の社会に暗い影を落としている、と、この本では見ているわけです。

これ以外にも、「公務員バリア」と呼ばれる公務員の特権(?)扱いを是認する判決が、昨今の公務員の腐敗や不正の元になっているとか、ロッキード事件の判決が、「もの言う裁判所」としての機能を自ら放棄してしまったのとか、全部で10件の判例を元に、現代社会の病巣を分析しています。

なかなか新鮮で、おもしろい視点です。
そして、事の深刻さと、権力組織の周到さ、狡猾さ、そして恐ろしさと、さらには権力に対する、市民の監視の重要性を感じます。
本の終わりの方で、いくつかの提言をしていますが、それ以外にも、やはり権力を監視する市民の眼と意識が必要なのだと、改めてそう思います。

それしにしても、かくもこの国はモラルハザードが進んでしまったのか、ひょっとしたら、戦後ひたすら(少なくともある一面では)その道を進んでいたのか?、とさえ思えてしまいます。
つくづく、この国が「責任取りたくない症候群」とか「判断したくない症候群」(どちらも、私「はてさて」が勝手に名付けました)に蝕まれてしまったのか、と暗くなります。
組織や個人のエゴ、そして「今」の利益が何よりも優先してしまい、他人や社会、将来の利益というものが、すっかり見えなくなっている、そんな気すらします。

最高裁判所の裁判官に対する国民審査の制度がいっこうに改まらないのも、今のままの制度であることが3権の権力者にとって都合がよいから、と説明され、さらには第4の権力にとっても、(少なくとも今は)都合がいいのだ、と想像できてしまうあたり、事の深刻さはかなりなものである、と思わざるを得ません。

この本では、裁判員制度の導入により、司法が開かれたものへと変革され、自浄作用が働くようになり、3権が互いに監視し、けん制しあうようになることを期待しています。
実際どうなるかは、市民次第といえるでしょう。市民が、「今」ではなく「将来」のことに目を開くことができるかどうか、ほんの少しだけ、社会のため、他人のために考えることができるかどうか、ということだと思います。
やはり、現代のモラルハザードな状態から少しだけ引き戻し、少し未来を、少し周りを、見つめ、そして考えるように、それだけの余裕は取り戻したいものです。
すぐにはできないし、難しいことですが、少しだけ。いかがでしょうか。はてさて。

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